「体力をつけたい」とき、何をすればいい?仕事や育児で疲れにくい身体のつくり方

「仕事が終わると何もする気が起きない」

「子どもと少し遊んだだけで疲れてしまう」

「午後になると眠くなり、集中力が続かない」

このような悩みから、「体力をつけたい」と考える方は多いと思います。

では、体力をつけるためには、有酸素運動をすればよいのでしょうか。それとも、スクワットなどの筋力トレーニングが必要なのでしょうか。

結論からいうと、仕事や育児で疲れにくい身体をつくるためには、有酸素運動と全身の筋力トレーニングの両方が必要です。

ただし、眠気や疲労には睡眠不足や生活習慣、病気などが関係している場合もあります。単純に「運動不足だから」と決めつけず、疲れの原因を分けて考えることが大切です。

そもそも「体力」とは何か

体力というと、長距離を走れることや、重い物を持ち上げられることをイメージするかもしれません。

しかし、本来の体力には複数の要素があります。

代表的なものとしては、

  • 心臓や肺の働きに関係する「全身持久力」
  • 重い物を持つための「筋力」
  • 同じ動作を繰り返すための「筋持久力」
  • 身体をスムーズに動かす「柔軟性・可動性」
  • 姿勢を保つ力やバランス能力
  • 疲労やストレスから回復する能力

などがあります。

体力は大きく、身体を動かすための「行動体力」と、健康を保ち環境の変化などに耐えるための「防衛体力」に分けて考えられてきました。つまり、「体力がある」とは、単に筋肉が多いことではなく、必要な活動を無理なく行い、その後に回復できる状態ともいえます。(J-STAGE)

疲れにくさは「仕事の負担」と「自分の能力」の割合で決まる

例えば、階段を上るために必要な体力が「50」だとします。

自分の体力が「60」しかなければ、階段を上るだけで能力の大部分を使うことになります。

一方、運動によって体力が「100」まで上がれば、同じ階段でも余裕を持って上れるようになります。

育児も同様です。

子どもを抱っこする、荷物を持つ、床から立ち上がる、追いかけるといった動作には、脚だけでなく、背中、お尻、腕、体幹など全身の筋力が必要です。

筋力が低い人にとっては、子どもを抱えること自体が高強度の筋力トレーニングに近い負担になります。筋力が向上すれば、一つひとつの動作で使う力の割合が小さくなり、疲れにくくなります。

つまり、体力をつけるとは、日常生活を楽にこなせるように、自分の身体の“最大容量”を大きくすることなのです。

有酸素運動とスクワット、どちらがよい?

有酸素運動が向いている部分

ウォーキング、自転車、水泳、軽いジョギングなどの有酸素運動は、主に全身持久力を高めます。

全身持久力が向上すると、歩く、階段を上る、長時間立つ、家事を続けるといった活動を、以前より低い負担で行いやすくなります。

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人に対して、息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上行うことを推奨しています。また、全身持久力の向上を目的とする場合には、有酸素性の身体活動を1回30分、週3回以上継続する方法が示されています。(健康日本21)

ただし、最初から30分続けて行う必要はありません。

運動習慣がない方は、まずは10分程度の早歩きから始め、慣れてきたら時間や回数を増やしていく方が続けやすいでしょう。

スクワットが向いている部分

スクワットは、お尻、太もも、体幹など、日常生活でよく使う筋肉をまとめて鍛えられる優れた運動です。

椅子から立ち上がる、階段を上る、床から物を持ち上げるといった動作を楽にするために役立ちます。

しかし、スクワットだけでは、背中、胸、肩、腕などの筋力を十分に鍛えることはできません。また、心肺機能への刺激も限定的です。

そのため、疲れにくい身体をつくるには、スクワットだけではなく、

  • 押す動作
  • 引く動作
  • 持ち上げる動作
  • 支える動作
  • 歩く動作

を含めた、全身のトレーニングが理想です。

厚生労働省は、成人に筋力トレーニングを週2~3日行うことを推奨しています。筋力トレーニングでは、方法にかかわらず、実施しない場合と比較して筋力や筋肉量の増加が期待できます。(健康日本21)

結局、最もおすすめなのは「組み合わせ」

仕事や育児で疲れにくくなることが目的なら、次のような組み合わせがおすすめです。

1.有酸素運動を週2~3回

早歩きや自転車を、1回20~30分程度行います。

強度の目安は、会話はできるものの、少し呼吸が弾む程度です。

最初は10分からでも構いません。通勤、買い物、子どもの送迎などに早歩きを取り入れる方法でも十分です。

2.全身の筋力トレーニングを週2回

例えば、次のような種目を組み合わせます。

  • 椅子を使ったスクワット
  • ヒップリフト
  • 壁や台を使った腕立て伏せ
  • ゴムバンドを使ったローイング
  • カーフレイズ
  • 荷物を持って歩く運動
  • 体幹を安定させる運動

各種目8~12回程度を、まずは1~2セットから始めます。

毎回限界まで行う必要はありません。「あと2~3回できそう」という余裕を残した方が、仕事や育児に疲労を残しにくく、継続しやすくなります。

有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせる方法は、心肺機能と筋力を同時に向上させる有効な選択肢とされています。どちらか一方に偏るよりも、日常生活に必要な総合的な体力を高めやすくなります。(PubMed)

3.座りっぱなしを減らす

週に数回運動していても、それ以外の時間をほとんど座って過ごしていると、身体活動量は不足しやすくなります。

デスクワークの方は、30~60分ごとに立ち上がり、2~3分歩くだけでも構いません。

厚生労働省も、座りっぱなしの時間を長くしすぎず、可能な範囲で頻繁に中断することを勧めています。なお、1日60分という身体活動の目安には、運動だけでなく、通勤、仕事、家事、買い物などの生活活動も含まれます。(健康日本21)

疲れている人ほど、最初から追い込まない

体力をつけようとして、いきなり激しいトレーニングを始める方がいます。

しかし、仕事や育児ですでに疲れている状態で、毎回限界まで追い込んでしまうと、回復が間に合わず、かえって日常生活がつらくなることがあります。

運動習慣がなく、持続的な疲労感を訴える健康な成人を対象とした研究では、低強度または中強度の運動を週3回、6週間行うことで、活力や疲労感に良い変化がみられました。特に疲労感については、低強度の運動で良好な結果が示されています。(PubMed)

体力づくりで大切なのは、一度に頑張ることではなく、翌日の生活に支障を残さない範囲で継続することです。

「眠くならない」は体力だけの問題ではない

定期的な運動は、睡眠の質や日中の眠気を改善する可能性があります。複数のランダム化比較試験をまとめた研究でも、運動によって主観的な睡眠の質、不眠症状、日中の眠気が改善する傾向が報告されています。(PubMed)

一方で、運動をしても睡眠不足そのものを帳消しにすることはできません。

厚生労働省の睡眠ガイドでは、成人は個人差を考慮しながら、少なくとも6時間以上の睡眠時間を確保することが目安として示されています。(厚生労働省)

十分に寝ているはずなのに強い眠気が続く場合には、睡眠時無呼吸などの睡眠障害、服用している薬の影響、精神的な不調などが隠れている可能性もあります。仕事中や運転中に目を開けていられないほどの眠気がある場合には、「体力不足」と考えて運動だけで解決しようとせず、医療機関に相談することが大切です。(健康日本21)

まとめ

仕事や育児で疲れにくい身体をつくるために必要なのは、有酸素運動かスクワットかの二者択一ではありません。

  • 有酸素運動で心肺機能を高める
  • 全身の筋力トレーニングで日常動作の負担を減らす
  • 座りっぱなしを減らし、日常の活動量を増やす
  • 十分な睡眠と栄養で身体を回復させる

この4つを組み合わせることが重要です。

運動を始めた直後から、まったく疲れなくなるわけではありません。しかし、無理のない運動を数週間から数か月継続することで、同じ仕事、同じ家事、同じ育児動作でも、少しずつ余裕を感じられるようになります。

体力づくりの第一歩は、激しい運動ではありません。

まずは今日、10分歩くこと。週に2回、軽い筋力トレーニングを行うこと。そして、きちんと眠ること。

小さな積み重ねが、疲れにくく、毎日を活動的に過ごせる身体につながります。